企業で論文を書くということ。

こんにちは、Moogleです。人生悩みは尽きませんね。ホントに会社という組織はなぜこうもいつも人間関係の課題が出てくるのか。人間関係で仕事が進まないのとか傍から見ていると本当に辛いですね😞

閑話休題。

修士で企業の研究開発職に入社された方ですと博士号を諦めきれない(というより心残り)方は一定数居られると思います。以前にもブログに書きましたが、学位を取るためには大学院に通われるか、会社で論文を書いて論文博士や社会人選抜で大学院に通われるかの選択になります。

↓下記ご参照↓

社会人をしながら大学院通われる方も居られますが、ご自身のこれまでのデータもある恩師の元に行かれて、土日に実験を出来るだけ行い論文を纏める方が多いような個人的印象を持っています。

全く新しいラボに入学される方も居られますが、社会人ですので本業もあることから時間の捻出が厳しい印象がありますし、生物系ならなおさら実験が細切れで出来ないことも多いので、卒業することすら難しくなる状況も発生するようです。また、この場合は入学先の先生や会社とも良くご理解いただく必要があると思います。

ということなので、ほぼ大半の方は会社で行った研究成果を論文にし、それを以て学位の取得に向かわれる方が多いのが現状です。

では、企業人の博士号への第一歩である論文執筆ですが、そもそも企業研究者は論文をいつ、どのように書くのでしょうか?

私は2社ほど民間企業の研究所に在籍していましたので、そこでの経験をもとにお仕事内容の論文化の実際や論文を纏めるための自分の心構えについて記事にしたいと思います。

論文ってどのタイミングで書けるの?

論文の「出しやすさ」は会社によってマチマチですが一般的に簡単ではありません。一般的なケースとしては、社外発表の許可に関する稟議書を提出・審議・判子リレー😨が待っています。動いているプロジェクトについては、なかなか承認されませんし、何ら関係ない昔の自社化合物の場合でも様々な確認・承認作業が待っています。さらには、会社に依ってはターゲット名が出ると疾患戦略がバレるから控えるようにするという極端な例も・・・。
正直、日本の内資研究者で話してると「同じ標的やってるな」ってこと多いんですけどね😏

例として製薬企業での研究者を例に具体的なケースを書いてみます。あくまで一例なのであしからずご了承ください。

薬理研究者

基本的に創薬プロジェクトを推進しておられるますので、データが沢山出ますよね。ただし!論文化の主なタイミングはプロジェクトが止まったときになります(悲しいのやら複雑な心境😑)。プロジェクトが上手く進んでいる場合は各社戦略があるので、自分が「書きたい!」と思えるタイミングで論文を書くことは出来ません。
ネタは沢山仕込まれているはずですし何らかの新規の発見も多いでしょうから、論文はいろんなストーリーを考えることができたりするところは薬理研究者の特権です。

合成研究者

薬理研究者に準じます。ただ、基本的には特許を書くことも多いかなぁと思います。
論文化に際しては、薬理の人と「誰が筆頭著者か?」議論が常に巻き起こっているイメージもあります😐

メドケムの方々はこれまでに世になかった化合物を作り出して、新しい生物活性を見つけるという点では、そこがやりがいですし明らかな新規発見なので、合成研究者が筆頭著者になることも多いです。生物系研究者はその化合物を使って新しい作用機序を提案したり検証する内容で筆頭著者になるでしょう。少し判断が難しいところですし考え方も多様でケースバイケースなので深くは言及しません。
(ホント筆頭著者争いは色々ございまして、それこそ博士を無理やり取らせたいからと・・・以下自粛)

動態・毒性研究者

 通常、プロジェクトに携わることも多いと思いますので、自分の書きたいタイミングでは書けないことが多いと思います。一方で新規化合物に関する代謝や毒性に関する知見は、誰にも先を越されて論文化されるわけではないですし、どうしても代謝や毒性の課題は起こりがちなので、意外に論文化のチャンスは多いように印象を個人的には持っています。

基礎系研究者(生物・合成・動態・毒性)

お仕事の内容を論文化しやすいポジションだと思います。プロジェクトに縛られていない研究テーマであればなおさらです。ただ逆に研究者としての手腕が試されることになります。上司は教授でもPIでもありませんので、研究員自身がテーマ選定、進め方、まとめ方、一連のプロセスが上手くコントロールできないと、永遠と実験だけしてしまい纏められない状況も生まれがちです😔。研究センスが問われるプレッシャーはありますが、一番論文に近いのも事実です。 
意外に居られるんですよね、目的不明の研究(というより実験作業?)を続けている方・・・

論文を出す心構え~生物系の方へ~

私の心構えを書いてみたいと思います。実際は実践できてなかったことも多いので反省の意味も込めて残しておきたいと思います。

  1. 論文になりそうなネタのときはn=3以上で複数回(最低2回)アッセイしておく
    たまにn=2や下手するとn=1で取り急ぎ前へ進めている人がいますが、論文化の折にはネックになります。社内の報告書は正直、日々の実験データの貼り付けで済みます。が、「論文書こう!」となって検定処理をしたく例数が足りず1年前のこの実験しようとなることがありますが・・・材料がない!😱となったことに心当たりある方も居られるかもしれません(実際に私はこれで1諦めました😗)。どうしても企業の研究は速度感が遅くなりがちなので、このように実験スパンが開くことがあり、それが仇になるケースも散見されます。ですので、論文化を狙っている方は、そのときは面倒でも少し検討回数増やすなどしてデータを蓄積しておくことを強くオススメします。
    後から実験していると何してるの?って上司に指摘されてしまいやすいですし・・・ね。

  2. 仮説を思いついたときは簡単でも裏実験でもいいので検証に乗り出す
    企業で研究していると、支流の研究にはどうしても着手しづらいところがあります(予算や人手の関係で)。ですので、何かを思ったときの検証実験は「イマ」やらないと、本当に検討する機会を逸してしまいます。こういうのどうなんだろ?と思いましたら、すぐに研究計画を考えて検討を開始されることをオススメします。そのような考え・思いつきは本流の創薬研究を加速化することも大いにあると思いますので、研究者魂や勘を大切にしたいですね。

  3. 注目している標的に作用し広く利用されている市販化合物を一緒にアッセイしておく(pan-inhibitorでもOK)
    急に具体的な話になりましたが意外に重要です。社内化合物は社員にとっては社内ライブラリーに沢山あったりして貴重さを感じにくいのですが、会社からすると大切な資産です。論文に構造を晒したくないということも容易に想像できます。そういったときのために、その化合物と同じようなMOAを持つ(または持つと考えられる)市販化合物も同時に評価しておくと良いことがあるかもしれません。新しい生物現象を見つけたときには、その化合物を使ってストーリーを作ればいいだけですし、稟議も通りやすいはずです。

つまるところ、常日頃から論文(や特許)にすることも考えて研究計画しておかないと、論文化は容易ではないということが私からのメッセージです。

企業の研究と新規なことを見出して論文化していく研究はいろんな点で違うんだろうなぁと思いました。

企業で論文を書くにあたり一番大切なこと

データに嘘がないことは大前提ですが、一番大切なことはインパクトファクターでもなく、

著者の選定と順序

このステップを軽んずべからず。これからの同僚の皆さんとの仕事の進め方にも影響しえますし、下手すると訴訟事件も発生する可能性があります。しっかり著者皆さんが論文の内容と著者であることに納得されている証拠にサイン等頂いておきましょう。

大学発の論文ですと、著者になぜこの人が?とか、なぜ彼の奥さんのお名前が!?とか摩訶不思議なことがまれに見受けられますが、企業発の論文は会社の「誠実性」に直結しますので、誰もが納得できる内容と著者で出版すべきです。あとからケチつけられることほど嫌なことはありませんので、会社人として、コンプライアンス重視でご対応頂くのが非常に大切かと思います。

Take home message

論文化も見据えて研究計画を立てて日々の実験を行うこと

これが論文を執筆する上で一番大切な心構えです。
当たり前のことなんですが、企業研究職だと心折れることも多いんですよね・・・😥

まだ企業で論文を書かれたことない方は、一度でも書かれてみると色々分かって次からはとても早く進められると思います。この課題に挑んでおられる挑戦者の皆さまのご検討お祈りしております。

 

ここまでお読みいただきありがとうございました!

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